バックパッカー税。頭大丈夫か?オーストラリアの政治家

  
オーストラリア政府は昨年2015年の予算案で提出されたワーキングホリデーのビザを対象とした税制の改正案を可決しました。改正案の趣旨はワーキングホリデーメーカーを居住者扱いから非居住者扱いに変更し、税率もそれに合わせて変更するというものです。これまでは居住者の扱いとなる、ワーキングビザ、永住権、オーストラリア国籍を取得している人は所得税の税率が一律32.5%ですが、非居住者扱いのワーキングホリデービザで収入を得る場合は年収18500ドルまでは税金を免除、それ以上収入を得ていたとしても19%の税率しか課せられないという税制上の特権が設けられていましたが、この程、税制改正の結果、ワーホリビザの税制上の特権が無くなり、居住者と同じく32.5%に所得税率が引き上げられます。

時給が他国より比較的高く、カジュアルジョブでも十分貯金できる収入を得る事ができると言われるオーストラリアでも、32%の税率を課せられれば、日本のアルバイトの時給かそれ以下に転じてしまう可能性があります。というのも日本の税制上での所得税率は所得の大きさによって7段階に別れており、この30%を超える税率は日本においては900万円の年収を超える所得者に課せられています。ちなみに195万以下の年収の所得者はわずかに5%の税率しかかけれないため、オーストラリアにおいて、この30%という税率がワーキングホリデービザを取得している所得者に対してどれだけ痛手になるか分かると思います。

こちらでは17ドルの最低時給が政府によって保証されていますが、17ドルの32.5%とと言えば5.5ドルです。実質手取りは11.5ドルとなり、現在のオーストラリアと日本の交換レートは1ドル80円ほどですから、およそ日本円にして920円の手取りしかもらえない事になります。オーストラリア、ワーホリで出稼ぎと言っている人もいますが、この税制が施行される7月になればそれは夢物語になります。

そもそもワーホリで来ている人はスキルが無くても働ける職に就く傾向があり、比較的容易に仕事が取得できるファームやレストランなどの労働市場では労働需要が労働供給を上回っている可能性があります。特にシドニーなど東海岸の都市部に行けば、需要の多さから最低時給に引き下げるレストランが多く、こちらダーウィンでも私が見る限りファームの平均時給が21ドルと噂されていたときよりも2ドル時給が下がってます。

オーストラリア政府がどういう見解で非居住者の税率を一般の居住者の税率に引き上げたか分かりませんが、私自身この改正については、オーストラリア国内の経済も大きく打撃をうける可能性があると見ています。オーストラリア財省が今回の税制改正の導入で年間5億ドルの税収が見込めるという話をしていましたが、目先の利益を追うことがどれだけ税収の損失を被るか分かっているのかと問いたい。

わたしがここ数週間バックパッカーホステルに滞在して分かったのは、オーストラリアで出稼ぎして祖国に金を持ち帰ろうなんてやからはほとんどいないという事です。彼らの目的は一つ旅を満喫する事。そのため稼いでは、そのお金を旅費につぎ込み、車を購入し、ツアーに申し込み、酒を買ってはパーティーをし、ワーホリの期間が終れば、帰りの航空券のチケットを買う分しか手元に残らないという有様の人間を多く見てきました。勿論オーストラリア国外で旅費をつぎ込む人もいますが、彼らがひと時の青春を費やす為にオーストラリア経済にどれだけ貢献しているか知っているのかと問いたい。

この安易な税制改正が観光業のみならずオーストラリア経済に少なからずダメージを与えることは目に見えています。バックパッカーは手持ちが多ければ有り金を全部はたく勢いで経験を購入するが、手持ちが少なくなると極端に節約する方向に走るからです。ワーホリの税制上の特権がどれだけこれまでオーストラリアの経済に貢献したかをオーストラリア政府には今一度見つめ直してもらいたいです。

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