寿司はファーストフードだ

  
オーストラリアに長い間滞在してきてオーストラリア人の寿司に対する接し方を常々観察して来たがもはやオーストラリアの国民食といっても過言ではないほど普遍的な存在になっている。寿司を普遍的な物へ押し上げている要因の一つが寿司のファーストフード化だ。通常我々日本人が寿司というキーワードを聴くと出前か、回転寿し、あるいは職人が丹精込めて注文に応じて握るスタイルのいわゆる伝統的な"寿司屋"を連想するが、こちらではマクドナルドのように店頭で購入して手軽に歩きながら食べられるファーストフードとして認知されている傾向にある。

もちろんカテゴリーとしては高級寿司店や回転寿司はメルボルンに幾らでもあるしどちらも人気だが、その反面日本の伝統的なスタイルを追及した寿司には未だに賛否両論ある。やはり生魚を食べるには抵抗がある人も一定数いるため、生魚をあまり使わずに、惣菜パンのように寿司ネタに様々な惣菜を使うスタイルが市民権を得ているように思える。

メルボルン市内の各所には寿司スタンドと呼ばれる、キヨスクのような箱形の店舗で路面販売していたり、回転寿司屋、日本食レストランなどが店の一部を改装して巻き寿司や稲荷を専門にテイクアウェイとして売っていたりする。またメルボルンセントラルやQVなどの大型デパートでも同様に店舗が存在し惣菜寿司として手軽に食べられる巻き寿司や稲荷が様々な惣菜とともに彩られ人気を博している。日本で言う人気デパ地下グルメというポジションだ。夕食の一品としてまたビジネスマンの昼食や間食として、子供のおやつて、幅広い世代に支持されている。

寿司というジャンルは日本の伝統的ないわゆる”寿司”というカテゴリーに縛られないほどそれぞれの国で独自の変貌を遂げている。いまさら言うまでもないが、オーストラリアに来て改めて寿司が世界食だと実感する。そして寿司が独創的かつ斬新なアイディアに優れているほど世界では賞賛される傾向にあると常々感じている。オーストラリアで良く目にする料理番組であったり、料理の特集記事が組まれたある雑誌であったり、影響力のある媒体はとにかく伝統的な食べ物にそれまでにない斬新な工夫が施された料理を求めている。 という話しをするとたいてい保守的な日本人は伝統的なスタイルの重要性と歴史観を持出して新しく海外で発展した寿司について苦言を呈するが、それは甚だ見当違いな批判と言えるだろう。料理はいつの時代もオリジナルのものが何らかの形でその国に伝えられ、長い歴史の中でその国独自の製法が加わり、さらにはその国固有の食べ物として認知されるようになる。

丁度カレーがインドで生まれ、イギリス経由で日本に伝えられ日本独自の食べ物として発展したように。丁度明治期に西洋料理が日本に伝えられ日本では洋食としてジャンルが確立し現在では日本食として西洋に逆輸入されているように。寿司は丁度各国で独自の変貌を遂げる過渡期と言えるのではないだろうか。少なくともオーストラリアでの寿司の位置づけは日本の料理というよりは。国民食になっていると思う。

ということでオーストラリア全土に展開するテイクアウェイ専門の寿司チェーンSUSHI HUBに行ってきた。
この店舗はロンズデールストリート沿いにあるデパートQVの一回にある店舗。この他にも何店舗か寿司のテイクアウェイを扱う店はあるが、QVで寿司の品揃えが一番豊富なのはここだ。ここは巻き寿司や稲荷がほぼ一つ2ドル前後に値段設定が統一されていて小腹が空いた時に手頃に買う事が出来る。昼時になるとビジネスマンでごった返す。

こちらのショーケースには様々なネタに彩られた稲荷が陳列している。ロブスター、海藻、サーモン、アボカド、かにかま、ツナマヨなど。こちらの店舗ではにぎり寿司も扱っている。

こちらは巻き寿司。唯一生であるサーモンとアボカドは全世界で共通の人気ネタだ。その他海老フライ、カツ、カニカマなど豊富なラインナップだ。この太巻きを切り分けずにそのまま頭からかぶりつくのがオーストラリア流だ。人気のネタを聴いてみたところマヨネーズとソースで味付けしたカツ巻きとサーモンアボカドロールということだった。小腹を満たすには理想的なスナックだ。

買って来たのはたっぷりと豪快にネタがつまったいなり寿司とにぎりだ。稲荷のネタはツナマヨ、ロブスター。握りは炙りカニかまのマヨネーズソース添えだ。ツナマヨのいなり寿司には赤いトビッコ、ロブスターのいなり寿司には青いトビッコと粉末状のパプリカそしてカニかまの握りには味付け海藻が彩りとして加えられている。

まずはツナマヨのいなり寿司から頂く事にする。ツナマヨは普通にうまい。味も塩っぱすぎずマヨネーズの量も適量だ。だが寿司酢に加える砂糖の量が多い気がする。甘過ぎ。また酢飯にマヨネーズを加えるのはあまり好きじゃないんだが、味は悪くないしもう一回食べてみたいと思える。さらに気に入った点はツナマヨがこれでもかと言うくらい大量に入っている事だ。よく日本のおにぎりの大手テイクアウトチェーンなんかだとおにぎりの具材とご飯をこれでもかと言うくらいケチって原価を抑えて儲けを出す阿漕な商売をしているが、そういう会社はオーストラリアのこういうところを見習って欲しい物だ。オーストラリアは少々高い面もあるんだが量は相応にきっちりと出すので文句が出ない。

次はロブスターの稲荷を頂く事にする。ロブスターの身は細かきざまれチリ風味の辛めのマヨネーズと和えられている。ご飯はブラウンライス、たぶん玄米が使われており酢飯に少し照焼きソースのような甘めの下味がついている。素材の味を楽しむというよりはソースやマヨネーズのしっかりめの味付けで食材の食感とソースの風味を味わうといったところだろうか。味は、うむ うまい! 基本的に全部うまいのだが、オーストラリアの寿司はソースが何と言っても味の要。様々なバリエーションのソースで味のグラデーションを作るのだ。照焼きソース?とチリマヨネーズの相性は抜群だった。

最後にカニかまの握りだ。マヨネーズを乗せたカニかまをバナーで炙って少し焦げ目をつけて海藻とともに海苔でシャリに固定させている。この海藻にはたっぷりとドレッシングがマリネされており、すこし焦げたマヨネーズと相性がとてもいい。カニかまの食感は日本とのカニかまと違いすこし歯ごたえがある。これもうまい、クセになるな。

ということで、日本の伝統的な寿司の啓蒙活動に勤しみ海外の寿司文化に偏見のある諸君、是非一回食してみて正直な感想を聞かせてほしい。

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